14の質問で”東京医大問題”に対する立場を決める

ここ最近全然ブログを書いてなかったんですが、自分が将来関連していく分野に関する大きな話題が出てきたので少し整理しつつ、自分の考えを書いてみようと思う。

東京医大の入試にて女子学生の一次試験の点数に女子の合格者数を調節する目的で得点調整が行われていた可能性がある、というニュースですが、みなさんこの問題に対してどういう立場でしょうか?

この問題に関して語る、あるいは何か有効な対策を打ち出すというのは非常に難しいというのが正直な感想です。

現在の日本の医療を取り巻く環境は微妙なバランスの上にギリギリ成り立っている状態でもあるので、どこか1つ制度を変えてしまうと思っているよりも大きな影響が出てしまうんですね。どの制度を変えても、それが崩れかかっているジェンガを支える最後のピースである可能性もあるわけです。

また、今回の件に関して単なる男女差別問題ではなく、医師の労働問題、今後の社会保障をどうしていくのかといった多岐にわたる議論が必要となります。

そして、今回多くの方がtwitterなどでワーワーと話している様を見て思ったのですが、医療という社会保障に対する意見を決定する上で個々人の根底にある思想(あるいは信念)の違いによりいくら話しても平行線のままということが多いと思います。

では、どのような信念が本件に対するスタンスの違いを生み出しているのでしょうか。それを抽出してみましょう。

1. 医師がブルーカラーかホワイトカラーか?

2. 医師の資質として頭の良さ(入試での得点)がどの程度必要か?(学力以外の重要なパラメータを認めるか)

3. 社会を構成していく上で自由競争に全てを委ねられるか、ある程度のデザインが必要だと思うか?

4. 男性と女性が完全に平等であるべきか?それとも性差は前提とするべきか?

5. 性差があることを前提とするならばそれを社会設計に盛り込むべきか?(性差に応じた役割に肯定的か否定的か)

6. 医学部に特殊性を認めるか?(社会福祉を担う職業訓練校と見るか、大学の1学部と見るか?)

7. 医師になる者を選抜する上で、将来のパフォーマンスの期待値を現在の属性から判断することに賛成か反対か?

8. それらの属性の中に自分で変えられない項目を含めてよいか?(性別、年齢、出身地、家庭環境など)

9. 与えられた構造の中での最適化を目指す際に一般的な悪手を取ることが認められるか?

10. 公平性と医療を維持すること、どちらに重きをおくか?

11. 現在の医師の労働環境を改善していく際に理想的な方法を探すか、枠組みの中での最適化を目指すか?

12. 政府が労働環境を改善するための政策を実施できるか?またそれを現在の日本社会が受け入れることができるのか?

13. 医師の労働環境を改善することと引き換えに何を捨てることができるか?(医療の質(治療方法の制限)、受診時間の制限、過疎地での医療(集約化)、社会保障費に関連した税金の値上げ)

14. 今の医療の質を保ちたいか、それより公平性を維持したいか?

 徒然と書き出していったはよいものの、思いの外考えなければならない要素が多いですね。そもそも非医療従事者や医学部の学生でなければ見えない要素も多いので、これは一人一人が話している論点もずれるし、話が噛み合わないし、いろんな意見の人が出てくるのも頷けますね。(もちろん、僕もまだ学生に過ぎないので見えていない要素も多々あると思います)

 

しかし、これらの要素が見えていなければ医学部入試において男女で差をつけることとと医師の労働環境の問題がどのように繋がっているのか理解することは難しいと思います。

ちなみに上記の項目に対し、僕は次のように考えますが、皆さんはどんな意見を持っているでしょうか?

1. 医師がブルーカラーかホワイトカラーか?

→ブルーカラー寄り

2. 医師の資質として頭の良さ(入試での得点)がどの程度必要か?

→それほど必要ではない。経験を積むことで合格点の仕事はそれほど賢くなくてもできるようになる

3. 社会を構成していく上で自由競争に全てを委ねられるか、ある程度のデザインが必要だと思うか?

→社会のコアにおいては必要だと思う。福祉も当然ある程度のデザインは必要。

4. 男性と女性が完全に平等であるべきか?それとも性差は前提とするべきか?

→性差があることは前提として方がよい

5. 性差があることを前提とするならばそれを社会設計に盛り込むべきか?(性差に応じた役割に肯定的か否定的か)

→性差を前提としてデザインした社会の方が男女ともに幸せになれると思う

6. 医学部に特殊性を認めるか?(社会福祉を担う職業訓練校と見るか、大学の1学部と見るか?)

→医学部に入学した者の中からしか医師になる人が出てこない以上、職業訓練校としての役割を担っている。一般的な大学の話とは分けて考えるべき。

7. 医師になる者を選抜する上で、将来のパフォーマンスの期待値を現在の属性から判断することに賛成か反対か?

→賛成。そこまで賢い必要はないものの、最低限受験勉強を乗り越えられる程度の継続性と能力は有している必要がある

8. それらの属性の中に自分で変えられない項目を含めてよいか?(性別、年齢、出身地、家庭環境など)

→医者になってからの勤労年数や地域に残ってくれるかの期待値を評価に盛り込むことは認められるべきだと思う。これは医学部に入学した者以外から医師を供給することができないため。年齢が高いほど勤労年数は少なくなるし、地元でなければその地域に貢献してくれる可能性は低くなる。同様に出産があること、一定数以上は出産を機に仕事を離れるので女性の医師の勤労年数が男性に比べて短くなりがちなことは評価に影響してもよいと思う

9. 与えられた構造の中での最適化を目指す際に一般的な悪手を取ることが認められるか?

→政策として何らかの改善が期待されない以上、現状の中での最適化を目指すことがベストだと思う

10. 公平性と医療を維持すること、どちらに重きをおくか?

→医療を維持すること

11. 現在の医師の労働環境を改善していく際に理想的な方法を探すか、枠組みの中での最適化を目指すか?

→現状では枠組みの中での最適化をせざるを得ないと思う

12. 政府が労働環境を改善するための政策を実施できるか?またそれを現在の日本社会が受け入れることができるのか?

→政策が実施されるとは考えにくいし、仮にその議論が進んでも現在の社会には到底受け入れられないと思う

13. 医師の労働環境を改善することと引き換えに何を捨てることができるか?(医療の質(治療方法の制限)、受診時間の制限、過疎地での医療(集約化)、社会保障費に関連した税金の値上げ)

→医療の質に関しては制限を設けてもいいと思う。

14. 今の医療の質を保ちたいか、それより公平性を維持したいか?

→医療の質は保ちたい